月光天文台、吉川先生のはやぶさ講演会(後編)
2010年 08月 26日
現地に回収班が到着したら虹が出ていた、ウーメラは砂漠なので基本的に雨は降らないが全く降らないわけではない。天気が悪いと・・・と心配したがその後の天候は問題なかった。なぜ天候が問題なのかというとカプセルが開くとパラシュートが出て、電波が出る、その電波が来る方向を地上4ヶ所のアンテナで調べて落ちた場所を測る。無事に電波が出てくれたおかげですぐ現地へヘリコプターで行けたのだが、電波が出なかった場合は写真を撮って流星観測でその功績を追って位置を特定するのだけど曇っているとそれができなくなる。実際は流星観測の必要はなかったが当日は良い天気で無事回収はできた。
回収時に物々しい格好をしているのは、電池とか火薬があるため万が一に備えてのこと、また回収前に一同が揃ってカプセルを見ているのは回収前にカプセルに亀裂がないかどうか確認している。亀裂があった場合、内部のイトカワからの物質がばらまかれている可能性があり、オーストラリア政府との取り決めでそういった場合は汚染を防ぐため周囲の土壌をすべて消毒しないといけない約束だった。(そのための消毒薬も用意されていた)
でもまあ、実際のところ消毒してもしょうがない、イトカワ自体にはそのような生物はまあいないですし。
ヒートシールドもカプセルの側ですぐ見つかった。カプセルは専用機で直接オーストラリア>羽田>相模原へ。カプセルはホコリがつかないように防塵服着用で開封、カプセル内のコンテナに実際のサンプルが入ってる。物々しい機械の最高級クリーンルーム、その中でコンテナの開封作業が行われる。現在中についている誇り上のサンプルを回収している、誇りには打ち上げ前に入ったものとイトカワのものが混ざってる可能性があるの、今の技術だと小さな粒でも調べられるの。
残った時間ではやぶさの他の話題について話したい、打ち上げられたときはさほど注目をされなかったが、2005年に小惑星についたときには少しは注目された。色んなトラブルがあったのも事実、どうしてかというと世界初のことに次から次へと挑戦していったことも原因。リアクションホイールのトラブル・燃料漏れで化学エンジンが使えなくなる・7週間にわたり通信が途絶える・イオンエンジンを工夫して使う・頼みの綱であったイオンエンジンも故障
ただ今回の経験があるから、次回は確実に仕上げていくのがはやぶさ2。2006年から提案していたがなかなか予算が通ってない。イトカワと違う種類の小惑星を目指す。表面から物質を取るのに加え衝突装置を積んでいき、表面で切り離し影側に移動。衝突装置が爆発し中から大きな玉が飛び出し小惑星に当たることにより人工的なクレータを作りそこに着陸。はやぶさの目的は惑星のもととなった部室を調べるのが目的、2が行く小惑星は有機物や水がある可能性がある。小惑星には水や有機物のあるものや禁則やレアメタルを含むものもある、将来的には利用出来るかもしれない。
はやぶさがイトカワを調べたおかげで他の国も他の国も小さな天帯の面白さに気づいて計画を立てている。
ここで質疑応答タイム。
Q:はやぶさに対して指令を出しているのはどこからどうやってやっているのですか?どのくらいの距離でどれぐらい時間がかかるのか?
A:電波は長野県の臼田にある64mのパラボラアンテナから、コントロールルームは相模原にある。イトカワにいたときは片道約16分、往復で32分もかかる。着陸とかでは間に合わないので早房のコンピューターが自分自身で計算してる。重要な操作の時はアメリカのアンテナも借りている。
Q:トラブルがあったとき(通信途絶の)どういったコマンドを送っていたのか?
A:通信が途絶えたのは燃料漏れで姿勢が変わってしまい太陽電池に光が当たらなくなったからで、回路自体は壊れていなかった。待っていれば1年以内ならば6~70%位の確率で光があたって通信が復活するはずという計算だったので、はやぶさにアンテナを向けて電波を出せというコマンドを打っていた。なぜ1年以内なのかは、予測でだいたいの位置が掴めるがそれ以上経つと誤差が大きくなり一の予想範囲が大きくなりアンテナで捉えられなくなる。
Q:サンプルはどうやって振り分けているのか?
A:電子顕微鏡で様子をみる。打ち上げ場所などのサンプルは分析してあるし落ちてきた隕石なども分析している。組成・構造・成分などを見比べて判断している。
Q:予定でははやぶさ本体は落とさないということだったそうだが、カプセルを切り離したあとはどうする予定だったのか?また、なぜイトカワが目的地だったのか?
A:壊れていなかれば切り離し後化学エンジンで衝突軌道を回避、地球スイングバイをしてどこか別の小惑星へ良く予定だった。目的地ははやぶさの性能で行ける星ということでネレウス>1989ML> 1998SF36(イトカワ)と変更されていた、元々の計画が小惑星にいってサンプル採取して戻ってくるという計画だったのでどの天体でも良かった。でも2に関してはすでに天体が決まっている。1999JU3はイトカワと似たような軌道を持っているが、このような軌道を持つ小惑星は限られていてC型小惑星はこれぐらいしかない。
Q:はやぶさ2では衝突体ををぶつけてクレータを調査すると言っていたが、イトカワのようなパイラブル構造で想定以上に破片が飛び散ってしまう可能性があり得るがそういった場合の対策などは?
A:衝突体をぶつけること自体が実験で、今の段階だと2Kg程度の弾を2km/sでぶつける予定。炭素質コンドライトだということを想定するとこれで2~3m程度のクレーターが出来るはずなんですが、実際にぶつけてみないと判らない。ガサガサすぎて打ち込んでも全くクレーターにならなかったりその逆もありえる。とりあえずぶつけるがその時にはやぶさ2は裏に退避させ、その後離れた位置で表面の様子を見ながら安全を確認してから接近・着陸する。はやぶさが色々トラブルがあった1つの大きな理由はイトカワに居られる期間が3ヶ月しかなく無理があった。今回は軌道を工夫して1年半かけて、じっくり観測&着陸を行うことによってトラブルを回避したい。
Q:イオンエンジンはどういう仕組みで何を推進力としているのか?
A:誤解がよくあるが燃料漏れを起こしたのは化学エンジン。イオンエンジンは起こしていない。キセノンというガスをイオン化して+ので電気を帯びさせて、マイナスの電気をかけるとそこから飛び出す。キセノンが燃えるのでなく太陽電池で発電した電気で加速する、なので加速させるためのエネルギーがいらないので軽くできるただ力は弱いので長い時間運転していないといけない。
更にこの後ニコイチ運用について説明
質問コーナーが終わってさいごに司会者から「宇宙を目指す若い人達へメッセージを」ということで
はやぶさ自体は非常に長いミッション。打ち上げから予定では4年、実際は7年。開発始まってから14年。そもそものアイデアは1980年代25年前。その頃は大学院の修士課程だった。これだけ長い時間かかる、特に惑星探査は時間がかかる。はやぶさ2もはやぶさの経験があるにもかかわらず打ち上がって戻ってくるのにあと10年、なのでぜひ若い人に積極的にミッションに参加してもらいたい。
よく宇宙のことやるためには大学で宇宙工学を勉強しないといけないと思われることはよくあるが、全然そういう事なくていろいろな分野の人がいる。もちろんロケットや探査機をやってるひともいるがそれだけでなく、宇宙飛行士が食べる食事や寝る為の布団を研究しているひともいるし、生物・医学などや、法律など関係ないと思われるが今回でも日本から打ち上げたカプセルを海外経由で回収した場合の問などもある。分野を限定しないで色々なものに興味を持ってもらえればよいかと。
という感じで最後はしめていました。